ラストエリクサー症候群→私はいつも”プレッシャーと戦っている”。せっかく世界中のあらゆるポケモンたちを確実に捕らえることができる最強の捕獲装置”マスターボール”を手に入れたというのに、たった一度きりしか使うことができないのだから。
マスターボールのベストな使い道
多くのトレーナーは、ゲームの終盤に登場する伝説のポケモン(例えば、第1世代ではミュウツー、第3世代ではレックウザ…)のためにマスターボールを取っておくのがベストだと考えてきた。また、スイクンやラティオスのように、あちらこちらへと逃げ回る伝説のポケモンに使いたいというトレーナーもいるだろう。中には、レベル2のコラッタにマスターボールを投げるのが面白いなんていう勇気あるトレーナーも…。OK、それもまた一興だ。
ただ私はあまりにも優柔不断で、上述したようなどの場面でもマスターボールを投げることができない。しかも自分でも驚くほどに頑固で、優柔不断さにはさらに拍車がかかっている。もうかれこれ10年以上はマスターボールを手にしながらも実際には投げていないような気がする。
いや、正直に言おう。もう二度とマスターボールを投げたくないのだ!頼む、マスターボールの呪縛から私を解放してくれ!!
各シリーズでマスターボールを使うのが最も妥当であろう伝説のポケモンが登場したとき、私は「はっ、こんな一度きりのアイテムなんて必要ねぇ!」とマスターボールを思考の外へと追いやってしまう。
そして、数多のハイパーボールで伝説を捕まえるまでに、延々と状態異常攻撃を繰り返し、(一発で簡単に無料で手に入るものを捕まえるために)、1時間のリアルな時間と数十万円のゲーム内通貨を費やしたことに満足感すら感じているのだ。これは私自身の問題でもあるのだが、、まぁそれはおいておこう。
真の問題は、お目当ての伝説ポケモンを手に入れた後、その使わなかったマスターボールを一体何に使うのかということだ。色違いポケモンと遭遇したときに、誤って倒さないように投げる?確かにそれもいいのかもしれないが、私はそもそも攻撃なんてしないだろう。では、他には?あぁ、何もない。ゲーム内で最もレアで夢のような最強アイテムを手に入れたのに、それを使う機会がどこにもない。
マスターボールをミュウツーに投げるとどうなるか
自分の頑固さは十分に承知の上だが、そもそもマスターボールでミュウツーを捕まえること自体が非常にチープに感じる。
これは初代『ポケットモンスター 赤・緑』においてポケモンリーグのチャンピオンになった後、多数の強い野生ポケモンたちが生息するハナダの洞窟最深部での、クリア後コンテンツのメインとなる部分だ。ここでは、マスターボールでミュウツーを捕獲して「あなぬけのヒモ」で外へテレポートするのが最も効率的なのは言うまでもないが、そうすると、なんだか拍子抜けしてしまう。
ミュウツーと正々堂々バトルしてHPを削った後に自分の手で捕獲したいという気持ちが勝る。そもそも出会い頭でマスターボールを使ってしまうと、“世界最強のポケモン”を人間のテクノロジーで・卑怯な手で無理やり服従させるような、まるでロケット団のサカキのような気分になってしまわないだろうか。
忠告しておくが、マスターボールを使うと、ミュウツーに恨まれること必至だ。ゲームがクラッシュして最初からやり直しになるなんてことになっても文句はいえない。なぜなら、ミュウツーの恨みを買い、グレン島のポケモン屋敷とその周辺を破壊しつくされてしまったロケット団とやっていることは同じなのだから。
もはやマスターボールに一体何の意味があるというのだろうか。最新作の『ポケットモンスター ソード・シールド』においても、ネットを使って人からもらったり、IDくじで当選したりすれば複数入手することもできるが…。はて、なんのために?
私はマスターボールの使い道に関して、子供の頃に感じたこの無垢な感情に未だに固執し過ぎているのかもしれない。あるいは、何事にも難しく考えすぎてしまう性格ゆえか―。いずれにせよ、私はどうしてもマスターボールを投げることができないでいるのだ。
そしていつしかこの問題に頭を悩ませる時間がいかにくだらないかを痛感し、マスターボールを渡されることに対して、怒りにも似た感情を抱いている自分がいることに気づいてしまったのである。
『ポケットモンスター』が、最上級のレアアイテムとしてマスターボールをプレゼントしてくれているのは理解できるが、実際にはこれをどう使えばよいのかが本当に分からない。率直に、私にとってマスターボールは全く無意味で使い道のない”ゴミ”も同然だ。