ポケットモンスターはもともと子供たちをターゲットにしたシリーズであるにもかかわらず、妙に闇を感じる部分であったり、ユーモアやユニークさを織り交ぜた内容が多いシリーズでもある。ゲーム内のポケモン図鑑を読んでみると、ポケモンの表向きの明るい雰囲気からは想像できないような妙にリアルなテキストが含まれていることは、度々各所で議論されていることからも分かるように、ポケモンファンの間では広く周知されている。
今回紹介するのはポケモンカードのイラストだ。ポケモン図鑑のテキストのように、ポケモンたちの普段は見られないようなストーリーや世界観がイラストに凝縮されているのだ。
アクシデント – リザード(BW/EBB)
コンセプトパック EXバトルブーストに収録されたリザード。このカードの悲しいストーリーはリザードではなく、その背後にいるチルットに起こるであろう出来事である。リザードは目の前の木の実に気を取られているようだが、一方で燃える尻尾の先には…。決してワザとチルットを燃やそうとしているわけではないのだが…。
チルットは非常によく燃えそうなふわふわな羽を持っているため、この後に訪れる突然の恐怖を想像すると、チルットがとても可哀想に思えてならない。
なお、実は同パックに燃やされた後のチルットが描かれたカードが収録されている。
このカードを見る限りでは、羽が多少焦げた程度でそこまで燃えてしまったような印象はないが、チルットはとてもお怒りの様子。こうなってくるとリザードも気の毒に思えてくるから面白い。
孤独 – エレブー(DP1)
ポケモンカードゲームDP 拡張パック「時空の創造」などに収録されたカード。エレブーの哀愁漂う表情や姿と、背景の美しい街並みのコントラストが、エレブーの悲しい孤独感を際立てている。
エレブーは特に何かを見ているわけではなく、ただ漠然と・ぼんやりとその場に佇んでいるのだろう。理由は定かではないが、都会の街から離れ独りぼっちのエレブー…、想像が掻き立てられる素晴らしいイラストだ。
内在 – リグレー(XY8)
「ポケモンカードゲームXY BREAK 拡張パック 青い衝撃」に収録されたリグレー。ポケモン映画の1作目「ミュウツーの逆襲」の世界観のような雰囲気を纏った1枚。
ポケモン図鑑によれば”50年前 UFOが 墜落したと うわさされる 砂漠から やってきた”とされているリグレーが、窓の中に写る自分を神妙な面持ちで見つめている。“自分は果たして何者なのか?”という疑問・困惑、そして恐怖、そういった内に秘める様々な感情と闘っているようにも見える。
このカードはリグレーというポケモンがどういう存在であるのか、またリグレーが抱えているであろう孤独や混乱・恐怖――、それらを見事に表現している。まるで人間と同じように深い好奇心を抱くその姿は、何気ない1枚のようで深いストーリー性を有した作品であるといってよいだろう。
破れる – オムナイト(PCG)
2005年発売「拡張パック まぼろしの森」に収録されたオムナイト。目を惹くのは涙を零して悲しんでいるオムナイトのイラストだが、背景を見てみるとこのオムスターのストーリーが明らかになる。
背後の2匹のオムナイトはどういった関係なのか。その答えは2匹の上部の泡の形に注目すれば簡単に分かる。そう、皆さんご存知のあのマークだ。
踏んだり蹴ったり – コダック(ADV)
2003年発売「ポケモンカードゲームADV 第2段拡張パック 砂漠のきせき」に収録されたカード。
コダックと言えばサトシの旅仲間としてアニメ初期から登場するカスミのパートナーとしてもお馴染みのポケモンだ。勝手にボールから意味なく出てきたり、バトルで言うことを全く聞かなかったりと、カスミを苛立たせる存在として印象的だった。ポケモン図鑑によれば、常に頭痛で悩んでいるポケモンであり、力を使うと頭痛が酷くなるため、基本的にボーっとしているらしい。
そんなコダックだが、イラストでは何らかのアクシデントに見舞われているようだ。なにかにつまずいたのかもしれないし、他のポケモンに攻撃されたのかもしれない。
ただ一つ言えることはこのコダックは自分の周りで一体何が起きているのか自分でも分かっていないのだろう。なぜなら頭痛を悪化させないようにいつもボーっとしているのだから。その上このような事態に見舞われれば誰だってキツい。大変可哀想であるため、早急にコダックの頭痛に効く新薬を開発して頂きたいものだ。
親子 – カラカラ(XY/CP4)
ポケモンカードゲームXY BREAK プレミアムチャンピオンパック EX×M×BREAK に収録されたカード。カラカラが悲しいバックボーンを持ったポケモンであることは、既に多くの方々がご存じのことだろう。頭にかぶる骨は死に別れた母親の骨であり、ときおり母親を思い出しては一人さびしく泣いている。けれども、ポケモン図鑑に「涙を流すたびに強くなる」とあるように、悲しくも勇ましさをもったポケモンでもある。
ポケモンカードのイラストにも、カラカラの悲壮感漂うストーリーを表現するイラストは数多くあるのだが、今回紹介した上記のイラストはそれらの中でも最も悲惨なイラストであるといって間違いないだろう。親を失い辛い思いをしているカラカラの周りに、傷口にたっぷりと塩を塗り込むように、楽しそうな笑顔の親子の姿が描かれている。子を抱く母親の姿を前に、母の骨を抱くカラカラはどんな想いでいるのだろうか。
行き着く先は… – リサイクル(PMCG)
ポケモンカードの悲しいイラストと聞けば、カードプレイヤーの多くはサポートカード(トレーナーズ)ではなくポケモンのカードを挙げるだろう。なぜならサポートカードの多くは、ボールやキズ薬といったアイテムなどが描かれたものであり、ポケモンが描かれているカードは少ないからだ。しかしながら、その中でも腹立たしい気持ちになってしまうようなカードも存在する。
1997年に発売された拡張パック 第3弾「化石の秘密」に収録されたカード。
トレーナーズカード「リサイクル」のイラストでは、恐らくバトルで負傷したであろうプリンが描かれている。バトルはポケモンの根幹を成す部分であるため、ここまでは理解ができるが、問題はここからだ。「プリンが何らかの機械で持ち上げられ、どこかへ連れて行かれていること」と「タイトルがリサイクルであること」を考えた時に事態は一変する。なんとも最悪なことに傷ついたプリンをポケモンセンターに連れていくこともせず、身勝手にリサイクルしてしまおうというのだ!
“リサイクル”とは悪の組織による活動の一環なのか、それとも…。行き着く先でプリンの身に何が起きるのかはこれ以上考えないことにしておこう…。
※メタ的に解釈すれば、トレーナーズカード「リサイクル」は、単にトラッシュ(敗北したポケモンが置かれる)からもう一度ポケモンのカードを山札の上に戻すという効果であるため、一度使われたポケモンをすくい上げもう一度使うという単純な意味でのタイトル付けかつイラストだが、ここはあえて記事の特性上、ストーリーを想像し膨らませていることをご容赦いただきたい。
止まる○○ – バネブー(ADV)
2003年発売 ポケモンカードゲームADV 「ギフトボックス」に収録されたカード。
このイラストを見てバネブーが仲間と共に跳ね回って可愛くこちらを見つめている微笑ましいカードだと思っただろうか。実はこのイラストにはあまりにも残酷で悲しく衝撃的な真実が隠されている。そして、この真実に気づくためにそう多くを語る必要はない。
以下はポケモン図鑑の記述である。
“眠っている時も飛び跳ねている”
“飛び跳ねる振動で心臓を動かしているので飛び跳ねることは止められないのだ”
お分かりいただけただろうか?
バネブーの心臓はバネの振動で動いているという。
さらに核心に迫る記述もある。
”尻尾をバネがわりにして飛び跳ねることで心臓を動かしているので止まると死ぬ”
イラストのバネブーは跳ねることを止め完全に手を地面についてしまっているような状態であり、心臓もその動きを停止している。見た目では分からないが既に死んでいる可能性すらあるだろう。
しいいいいい
ばね部ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
子供向けなのにこんな悲しいことがあっていいんですか!?!?!?
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