引っ込み思案な子供が大人になってバリバリに仕事をこなしたり、やんちゃだった子がすっかり落ち着いて慎ましやかな大人になったりと、人間世界でも成長によって人格に変化が見られることはなんら珍しいことではない。とはいえ、昨日までおままごとをしていた少女が、今日は大型バイクを乗り回しているというような極端な変化は起こらないだろう。
実際にこれが起こっているのが、コイキングからギャラドスへの進化である。素っ頓狂な顔をしてピチピチ跳ねまわるだけだったコイキングだが、いざギャラドスに進化してしまえば、対峙した側が口を開けて跳ねまわるしかない状況に陥らされる。咆哮をあげて暴れ回るギャラドスの姿を見れば、それが昨日までのコイキングと同じ個体なのかすら疑わしくなってくるほどだろう。
抑圧からの解放
これについて、興味深い研究がある。実は、コイキングは最弱のポケモンなどと揶揄され続けてきたことで、相当なストレスを溜め込んでいたのではないかというものだ。天敵も多く、平穏に生きることすら許されなかった抑圧感が、ギャラドスに進化することで一気に解放される。彼らが凶悪ポケモンなどと分類されるのも、元はと言えば差別的な待遇を受けたコイキングたちの嘆きに根差した因果なのかもしれない。
人間は肉体や精神が緩やかに段階的に成長するがゆえに、その人格が一度に変わることはない。しかし、もしも毎日虐待を受けて苦しんでいた子供が、ある日突然強靭な肉体とよく回る頭を手に入れたとしたらどうだろう。その時、虐げられ続けた子供が手にした力を武器に反撃に転じないとは、全くもって言い切れないだろう。
そのような目でコイキングを見ていると、なんだか申し訳ない気持ちにすらさせられてしまう。
しかし一方で、口を開けてボーっとした目のコイキングたちを見ていると、本当にそれほど大きなストレスや復讐心を抱えているのかとも疑問に思えてくる。もしかしたら、進化したギャラドスが凶悪に暴れているように見えるのも、当人からすればコイキング時代にやっていた通りに、ピチピチ跳ね回っているだけなのかもしれない。