今回はトリックルームという技について考察していこうと思う。
トリックルームは繰り出すと5ターンの間すばやさが逆転し、最も遅いポケモンから順に行動ができるようになるという補助技の一つである。元のすばやさの数値が低ければ低いほどトリックルーム下でのすばやさが高くなり、高ければ高いほどすばやさが低くなるかなり厄介な技だ。対戦ではトリルという略称で呼ばれ、トリックルームを軸にしたパーティをトリパとも呼ぶ。
こちらはエスパータイプの技で、トリックルームを覚えるポケモンもエスパータイプのポケモンが多い。このトリックルームについては公式から詳しい解説はされておらず、プレイヤーは「こういう技なんだ」となんとなくで理解するしかない。
この点については深く考えたことがないプレイヤーも多いのではないだろうか。
トリックと名乗るからには人を惑わすような巧みな技術を用いて、ルームと名乗るからには室内のような空間が広がっているのだろうか?
トリックルームはどのようにして相手の素早さに干渉しているのか
やはりどのようにして相手ポケモンのすばやさに干渉しているのかは気になる点である。
トリックルームの技説明には以下の説明が載せられている。
まかふしぎな くうかんを つくる。5ターンの あいだ おそい ポケモンから こうどう できる。
行動の速度が歪むような摩訶不思議な空間そのものを生成する技だと公式は解説しているが、そのような空間がどうやって作られているのかについて触れている文章はない。
フーディンやブリムオンなどの強力な能力を持つポケモンであれば概念そのものを捻じ曲げたり、重力的な負荷をかけて相手の動きを遅めたり早めたりするのも可能かもしれないが、トリックルームはヤドンやネイティなどの比較的身体の小さいポケモン達も使える技なので、そんな小さなポケモン達が自身の力を酷使するような大掛かりな技を使うとは考えにくい。
そこでトリックルームは催眠術のようなもので、空間を支配しながら相手のポケモンを洗脳してあたかもすばやさが逆転しているように思い込ませるような技なのではないかと私は考えた。
小さいポケモンでも空間の重力自体を操ることは難しくてもポケモンに対する催眠なら容易いだろう。このように幻術のようなものであれば5ターンしか効果の持続がないというのも、部屋のように小さな空間の中でしか効力を発揮できないというのも頷ける。
アニメにおけるトリックルーム
このトリックルームはアニメにも登場している。
アニメポケットモンスターXYの77話「クノエジム戦!美しきフェアリーの罠!!」ではジムリーダー、マーシュの手持ちポケモンであるシュシュプがトリックルームを使用、バリアで囲まれた部屋のようなものが周囲を取り囲むように出現し対戦中のサトシのポケモン達が空間内に閉じ込められてしまう。
フィールド一面が壁に覆われているのが見てわかるだろうか。トリックルームは人間の目視で確認できるものであることがアニメのこの回で初めて判明した。
サトシはこの中でも果敢にヒノヤコマにニトロチャージを指示をするも、追加効果で上昇するはずのすばやさはトリックルームの効果によってどんどん低下していく。みるみる鈍足になっていくヒノヤコマの攻撃はことごとくシュシュプに回避されてしまい、シュシュプのムーンフォースを避けきれずヒノヤコマは戦闘不能となった。
サトシが次に選出したポケモンはルチャブル。普通に正面から戦っても勝機がないと判断したサトシは最終的にはルチャブルのシザークロスでトリックルームを破壊するという荒業に出た。
シトロンの発言曰く、トリックルームはエスパータイプの技なのでエスパーに有利であるむしタイプのシザークロスで効力が弱まり壊すことができたのだそうだ。
ゲーム内では当然再現不可能な戦術なので視聴者は置いてけぼりな展開である。
このトリックルームの破壊はシュシュプのジャイロボールの回転を利用してルチャブル自身を加速させることで可能にできたものなので、サトシとルチャブル以外には決して真似のできない戦い方なのだろう。
「シザークロスでトリックルームを壊す、それが俺の狙いでした」
マーシュに勝利後のこのサトシのセリフはお前は何を言っているんだと言わんばかりに視聴者からネタにされた。
この回を視聴後に「トリックルームを張られてもシザークロスで対策できる」と誤認してしまった幼い子供達もいるかもしれない。
ゲーム内では明らかにされていないが、トリックルームを取り囲む壁のようなものは確実に存在していることがわかった。
トリックルームは人間や物体に対しては効かないのか
このトリックルームは人間や物体に対しての効力はあるのかどうかが気になる点だ。
刺激的な日常が当たり前なポケモンの世界であっても飛行機のフライト中に突然機体が減速しはじめたり、身体の不自由な方を乗せた車椅子が急に高速で走り始めたら、確実にトリックルームは人間への脅威になるだろう。
人間や物体の動作に対してこの技が有効ならいくらでも悪用できてしまうし、犯罪を助長する手段にも繋がってしまう。
トリックルームを再度使うことで歪ませた空間を元通りにすることも一応可能なのだが、どんなに素早いポケモンでもトリックルームを使用するターンは必ず後攻になってしまうのでなにかトラブルが起きた際の対応には遅れてしまうだろう。
私がトリックルームの催眠術説を唱えたい理由としてはこういった背景もある。