最も多彩な攻撃を仕掛けるポケモンと言えば、どのポケモンを思い浮かべるだろうか。ゴーストタイプのように搦め手が多いポケモンや、物理にも特殊にも秀でたポケモンを候補に挙げる人もいるだろう。
しかしながら、この世界には火炎放射とハイドロポンプを同時に操り、空も飛べば穴も掘るという超越的な立ち回りをするポケモンが存在する。そう、それが巷で画伯などと呼称されるポケモン、ドーブルなのである。
本来他のポケモンが操る技を真似して見せるポケモン自体は、少なからず存在する。相手の技を先取りしたり、物真似をしたり。メタモンは一度変身してしまえば相手の姿形になって同じ動きをして見せるし、指を振ったピッピが突如悪意に満ちた波動を放ったりすることは、ドーブルのそれにいくらか近しい宇宙的次元に到達していると言えるだろう。
しかし、やはりドーブルはさらに一枚上だ。ほんの少し、尻尾のインクで絵を描いてしまいさえすれば、ありとあらゆる技を意のままに再現出来るようになる。一介の犬風情が、どうして聖なる炎で敵を焼き払ったり、絶対零度の極寒に敵を誘うことを成し得るというのだろうか。
ポケモン学には未だ未知なるブラックボックスが多数存在しているとはいえ、画伯が自然の摂理をいとも簡単に超越する仕組みを解き明かすのは今世紀中には不可能であろう。
メカニズムの解明がおよそ不可能であるのを良いことに、ひとつ無責任で勝手な考察を述べておこうと思う。ドーブルが繰り出す技の数々は、超絶リアルで、現実としか思えない立体映像か何かの類である、とすればどうだろう。
まるでVR体験のように、ドーブルが破壊光線を打ったような気がした、跳び膝蹴りを放ったような気がした、と相手に思い込ませるのである。突飛な考察に思えるかもしれないが、ともすればドーブルの放つ技の数々のあまりの威力の低さにも、合点がいくというものではないだろうか。