ジムリーダーは先生!?
寄稿者:しげぞう(28歳・茨城県)
これは、まだポケモンのゲーム画面が白黒だったときのはなしです。
小学生だった私は、幼いながらポケモンマスターをめざして小さな画面のなかで毎日冒険をしていました。一人でできる。それに加え学校でみんなと共通の話題で盛り上がれる。兄弟のいない私にとってはこれほど好都合で熱中できるゲームはありませんでした。
当時は通信ケーブルをもった友達も少なく、自分のポケモンをまわりと戦わせることはほとんどなかった為「自分のポケモンが一番つよい!!」と信じ、日々ポケモンマスターへの道をすすんでいました。
◇
そんなある日、給食がおわってお昼休憩の時間、いつも通り友達とポケモン話に花を咲かせていると、ある先生に関するうわさ話を聞きました。
『M先生のポケモンはめっちゃ強い。しかも対戦で勝ったら、カイリュウをくれるらしい!』
「M先生が?!?ポケモン?!」と私はまるで、あやしいひかりをあびたポケモンのように混乱してしまいました。なぜかというと、私が通っていた小学生の中でM先生とは子どもたちが最も恐れる先生だったのです。そんなM先生がポケモンをしていること。ましてや、なぜM先生のポケモンが強いとしっているのか。不思議なことだらけで早速調査をしました。
まずは聞き込みから・・・。
他の友達に、「M先生とポケモンをしたことがあるか?」と確認。大多数が、「したことはないけど、その噂は知っている」との答えでした。その中に「昼休みに対戦してくれるらしい」との有益情報が!
「ん?放課後とかじゃなくて、昼休みなの??」
友達にきけば聞くほど謎が深まるばかりで埒があかない・・・。
「よし。こうなったら自分でM先生に確かめよう!」と強い意思をもって、職員室へ駆け込みました。
M先生の前に行くと少し緊張しましたが、ここで引き下がるわけにも行かず単刀直入に「M先生!ポケモン勝負してくれるって本当ですか?!」と質問すると、以外にもM先生は「本当だよ」とすんなり回答をくれました。
噂は本当だ!と嬉しくなり、すぐさま「明日僕と、ポケモン勝負してください!」と約束をしてもらい、その日の夜はいつもより念入りにポケモンの育成や作戦の練ってわくわくしていました。
◇
迎えた翌日……。
M先生が対戦前にルールを私にわかるように簡単に説明してくれました。
「俺に勝ったら、自慢のカイリュウをあげる。その代わり・・・・」
対戦が始まることに胸を踊れせていた私は、次の言葉をすぐには理解できませんでした。
「その代わりにお前が負けたら、お前の自慢のポケモンもらうから」
少し間を置き、やっと言葉の意味を理解した私は恐怖のあまり楽しみにしていた対戦を投げ出しその場から逃げ出してしまいました。恐怖心を振り払うように必死に走りながら心のなかで「サトシみたいに勇敢に立ち向かえる勇気が欲しい」とひしひしと感じていました。
M先生は現実世界のジムリーダーのような存在でまだ歯が立たないこと、人生はじめての挫折、そして大人というのは恐ろしい存在だということも理解した瞬間でした。