「ここはポケモンセンターです」
寄稿者:女性・キンセツシティ
ここはポケモンセンター。
ポケモンが傷ついたらここに連れてきて。
さてさて、今日はどんな人がやってくるでしょう。
どんなポケモンがやってくるでしょう。
◇
「ジョーイさん。僕のゼニガメお願いします」
その日やってきたのは小さな男の子。
腕に抱えているのは水ポケモンのゼニガメ。
ゼニガメは男の子の腕の中ですやすや寝ているようでした。
あらあら、どうしたのかな?
「今日ね。ゼニガメと一緒にいっぱいいっぱい遊んだんだ。そしたらゼニガメ、疲れちゃったみたいで………」
男の子は笑顔いっぱいに語ります。
ゼニガメをマシンで休ませる間、男の子は話します。
「あのねあのね。このゼニガメ、この間、僕が捕まえたんだよ。モンスターボールをえいって投げたら、入ってくれたんだ」
ニコニコニコニコ。
男の子は実に楽しそうに話します。
やがてマシンがピロンと鳴って、ゼニガメは元気になりました。
「わー、よかったね、ゼニガメ。じゃ、家に帰ろう?」
男の子とゼニガメは二人仲良く手をつないで、てくてくと帰っていきました。
◇
ここはポケモンセンター。
ポケモンが傷ついたらここに連れてきて。
さてさて、今日はどんな人がやってくるでしょう。
どんなポケモンがやってくるでしょう。
「あ、すいません………」
その日やってきたのは二十歳くらいの男の人。
「カメールなんですけど………」
と言って、ボールを渡してきました。
あらあら、どうしましたか?
「ちょっとこの町のジムに挑戦して、それで………」
言いにくそうに口を閉じる男の人。
カメールをマシンで休ませる間、男の人は話します。
「ここのジムって、電気タイプのポケモンが多いんですよね。いや、ジョーイさんなら知ってるんでしょうけど………」
はぁ…とため息をつく男の人。
「やっぱり他のポケモン捕まえないと………いやいや」
独り言のようにつぶやいてから、頭を横に振りました。
「今までずっと一緒にやってきたんで、いまさら他のポケモン、っていうのもね」
ハハハ…と空笑いを上げます。
やがてマシンがピロンと鳴って、カメールは元気になりました。
再びボールに入ったカメールを受け取り、
「どうしようかな………」
そっとつぶやきつつ、男の人はとぼとぼと帰っていきました。
ここはポケモンセンター。
ポケモンが傷ついたらここに連れてきて。
さてさて、今日はどんな人がやってくるでしょう。
どんなポケモンがやってくるでしょう。
「すいません。ジョーイさん。こいつお願いします」
その日やってきたのは、おじいさん。
その横を歩くのは、同じくらいの大きさのカメックス。
しっかりとした足取りですが、疲れているのかゆっくりと向かってきます。
あらあら、どうしたんですか?
「ちょいと仕事で働かせすぎてしまってね。水を出させすぎちまって」
ポンと、その肩をたたきながら、自慢げに語るおじいさん。
カメックスをマシンで休ませる間、おじいさんは話します。
「もう、こいつとも長い付き合いになったんもんだよ。確かワシが子供の時からだから、えーと………」
指折り数えるおじいさん。
しばらく指を折りましたが、諦めたようにパッと指を開きます。
「ま、忘れるくらい長い間っちゅうことじゃな」
はっはっは。元気よく笑うおじいさん。
「寝る時も出かける時も、ずっと一緒にいたもんじゃ。楽しいこともあったし、ケンカしたこともあったのう………そうそう、ジムに挑戦して何回も負けた時は、そらもう大ゲンカしたもんだよ」
懐かしむように遠くを見やりながらおじいさんは語ります。
「でも、どれだけ負けても、どれだけ倒れても、こいつを手放す気にはなれなかった。だって、こいつは………ワシのパートナーじゃったからな。」
自慢げな表情でおじいさんは言いました。
やがてマシンがピロンと鳴って、カメックスは元気になりました。
「よし、帰ろうかの」
おじいさんの言葉にカメックスはうなずき、二人は横に並んで元気な足取りで帰っていきました。
◇
ここはポケモンセンター。
ポケモンが傷ついたらここに連れてきて。
さてさて、今日はどんな人がやってくるでしょう。
どんなポケモンがやってくるでしょう。
「あのー、ジョーイさん。この子、お願いしたんですけど………」
その日やってきたのは、ゼニガメを連れた小さな女の子。
「あの、この子、先日おじいちゃんにもらったばかりのゼニガメで………あの、えっと………その、私、ポケモンのお世話とか、まだ慣れてなくて………」
大丈夫大丈夫。
と、女の子にやさしい声で伝えます。
だってここはポケモンセンター。
どんなポケモンでも、元気になれる場所だから。
だから安心して、ポケモンを連れてきてね。