14歳からの携帯獣学――1
2023-07-12

14歳からの携帯獣学――1

――なぜ、人間がポケモンを捕まえたんでしょう。どうしてポケモンが人間を捕まえなかったんでしょう。

※これは今週行われた特別講義のインターネット・アーカイブです。感想を書いていただけると、来週からの授業の改善に繋がります。

はじめまして。シュロ・トクジと言います。普段はエンジュ大学でシンオウ神話の研究をやっています。今回はちょっとしたご縁があって、今回アート系の学校に通う子たちに、特別に講義をすることになりました。インターネット配信もするらしいよ。凄いね。授業じゃなくて講義っていうとちょっとカッコイイ感じがするでしょ。
じゃあ、初回はちょっと雑談しましょう。私は最初、黒板に、『なんで人間がポケモンを捕まえたんだろう』って書きました。力が強いから? 頭がいいからかな? モンスターボールがあるから? みんな考えたことありますか。人間がポケモンを捕まえたというときに、こう思った人もいるかもしれない。「そんなマイナスな言い方をしなくても、人間とポケモンはパートナーなんだからそれでいいじゃないか。」たしかに、そうかもしれない。これは後々考えましょう。
さて、みんなも分かっていると思うけど、大半のポケモンは私たちよりも強いよね。だから、人間の方が強いからポケモンを捕まえてるんだっていうのは変じゃないですか。細かく言うと、人間はポケモンとは別の強さを持ってるんだ、ということは言えるけどね。これは後の授業でやりましょうか。

たとえば、私の手持ちにはフーディンがいます。(フーディンを繰り出す。)ね、カッコいいでしょう。もうちょっと近くで見てもいいよ。
はい、みんな近くに集まったね。フーディンはどう? いい匂いがする? ありがとう。フーディンも嬉しそうです。それじゃあ、みんなが集まってくれたので、少し実験をしてみますよ。今から、私はスプーンを配ります。確認してみて。

弾いてみてもちゃんと硬いですよね。(カン、カン) じゃあ回収します。はい、みんな戻したかな? それじゃあフーディンのサイコパワーを見てみましょう。よいしょ!(シュロ、スプーンをふわっと上に投げる。スプーンが絡み合ってボーマンダの形になる。翼の一部が欠けている。)ははあ、なるほどね。あれですね。

(フーディン、指を曲げる。一人の生徒のポケットからスプーンが出てくる。)

あっ、やっぱり! 隠してたってことだ。特性はいたずらごころかな? ファンキーですねえ。芸術家を目指すならこれくらいの方がいいのかもしれない。皆さんも分かったと思うけど、ポケモンの中にはスプーンを隠してるな……なんてことが分かるような、すごいポケモンもいるんですよ。頭がいいでしょ? ここで最初の質問に戻ってみましょう。なんで人間がポケモンを捕まえたの? これに答える時にさ、私は誰かがスプーンを隠してるな、とは思ったけれど、誰かまでは分からなかったんですよ。ということは、人間の方が頭がいいなって理屈はどうも変なことになっちゃうんだね。ありがとう、フーディン。戻っていいよ。
(シュロ、ボールを出す。フーディン、首を横に振る。)

あ、そうなの(笑)。まだいいのね。君たちのことが気になってるみたいです。見てくれれば分かると思うけど、私とフーディンの関係っていうのは微妙なものです。仲はいいけれど、モンスターボールがあるからってポケモンがなんでも言うことを聞くわけじゃない。今回は私が言うことを聞いてる。しょぼいオジサンですね。でも、アローラにはキテルグマというポケモンがいて、そのポケモンに大けがを負わされるトレーナーもたくさんいます。だから、私だけってことでもない。みなさんの中にも、そういう、世間的にはアブナイと言われてるポケモンをパートナーにしている人がいるかもしれません。そして危険なイメージを払拭したいと思ってる人もいるかもね。もちろん、素晴らしいことです。
人間とポケモンは支え合っていて、人間はポケモンのことを、ポケモンは人間のことを思っている。

そうだよね?(生徒頷く。)その通り。私たちは持ちつ持たれつのパートナーです。だけどね、難しい問題もやっぱりあるんだ。人間はポケモンのことを捕まえるでしょ。でもポケモンの方は街から人間を攫ってきて、自分たちのパートナーに! なんてやらない。それはどういうことなんですか、不平等ですよって聞かれたら、答えるのは難しい。ハルモニアなんとかって人の、それに漬け込むような形でプラズマ団という組織がある訳ですよね。プラズマ団の主張に対して世の中のトレーナーがどんな反論をしたのか。この問題はね、プラズマ団が一回解散したから、なんとなくポケモンと一緒にいるのはいいことなんだ、って風になっています。でも、理屈の上ではまだ決着がついてないんじゃないか、ということを、時々思うわけです。これから私が、みなさんといっしょにしようと思っていることには、ものすごく色々な要素が含まれています。
たとえば、歴史のこと。(スプーンが巻物の形になる。)
生物。(走るピカチュウの形になる。)
植物。(クラボの木の形になる。)
地理。(イッシュ地図の形になる。)
数学。(素数定理の形になる。)
生活。(家の形になる。)
国家。(旗の形になる。)
科学。(二重らせんの形になる。)
神話。(アルセウスの輪の形になる。輪が手のひらにそっと落ちる。)
どう。すごいでしょう、フーディンが頑張ってくれました。正直言うとね、このテーマは難しすぎるんですよ。私もなんでやろうと思ったのか分からない。ただ、こういうものがあるんだ! と若い内に知っておくのは、私はものすごい大きな糧になると思います。私より皆さんのほうがずっと新しい感性を持っているから、その力をぜひお借りしたい。そういう思いもあります。じゃ、次から本格的な話に入っていきますね。みなさん、また今度。

大学教授
61歳
男性
ジョウト在住
タマムシ大学文学部卒業。同大学院人文携帯獣科学研究科博士課程修了。文学博士。現在エンジュ大学教授。シンオウ神話や各地の携帯獣伝承を中心とした文学を専門とする。
この記事にイイねする
メール通知登録
通知方法
3 コメント
古い順
新しい順 高評価
Inline Feedbacks
View all comments
匿名
11 か月 前

優劣ではなく、一方が一方を使役しようとするかどうかその欲望の有無が始まりなのかな…と思いました。なぜポケモンは我々を捕まえないんでしょうね…。

匿名
11 か月 前

初回でグッと引き込まれました…

匿名
8 か月 前

結構引き込まれますね…
確かに考えてみれば二足歩行のポケモンが我々にモンスターボールを投げても不思議ではない…

投稿をシェアする

カントーからパルデアまで全世界で流行っている、記事コンテンツを気軽に発信できるサービスです。Pokelogの愛称で親しまれています。