そろそろ目指せポケモンマスター
寄稿者:サトシ(35歳 男性・マサラタウン)
俺の名前はサトシ。
子供のころは相棒のピカチュウや仲間とともに、いろんな地方へ旅に出るのが最高に楽しかった。毎日仲間と騒ぎ熱いバトルを楽しんでいた。当時は寝床なんて気にせず外で満天の星空のもと寝ていた。四天王にも勝ったことがある。チャンピオンにはなれなかったが、そこそこの地位と名誉を手に入れた。賞金はすべてポケモンと食費に費やした。
しかしそんな俺の生活はある日突然崩れたんだ。
18歳になったとき母親から1通のメールが来た。
「サトシ、あんた税金払ってるの?」
まともに学校に行ったことがなく旅ばかりしていた俺は何のことだか分らなかった。旅に出るとき母親から渡された「国民健康保険書」と書いてある小さなカードなら持っている。これを持っていると全国各地のジョーイさんが安く面倒を見てくれるんだ。母親はこうも言った。
「あんたバトルに勝った賞金は確定申告しないと脱税で捕まるわよ」
急いでポケモン図鑑で調べるとどうやら確定申告をしないと「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」があるという。
◇
翌年、案の定通知が届いた。
「サトシ殿 罰金120万円1年以内の支払いが出来なければ懲役刑」
俺の名はサトシ19歳
所持金 -120万円
手持ちポケモン ピカチュウLv55 ラッタLv50
所持品 マウンテンバイク テント 傷薬2つ モンスターボール15個
「ここから俺の冒険は始まるんだ!」
おれは急いで身支度をして家を飛び出した。
「まずバトルはNGだ、完全に時間の無駄だ。お嬢様クラスの金持ちと当たらないとマジで詰む。雑魚ポケモンは倒しても銭にならんし…」
俺は悩みぬいた。1年で120万円+その年の生活費、確定申告を行うと考えると200万円は欲しい。お嬢様狩りは再バトルできるまでに時間がかかりすぎる。道中見つけたときのみ戦おう。まずお嬢様クラスには勝てるはずだ。レベルが高く周回できるような場所でないといけない…。
「あ、チャンピオンロード。そうだ、あそこなら苦戦はするが無限にレベルの高いモンスターが出てくる。手持ちポケモンと相性はあまりよくないが一度クリアできたんだ、何とでもなるはずだ。チャンピオンロードを抜けたところにすぐポケモンセンターもあるし明かりもある。寝泊りには困らないだろう。よし、行こう。」
おれは相棒たちを連れてマウンテンバイクで爆走した。こんな時ピジョットがいれば何とでもなったが奴は結婚して去ってしまった。戻ってくることはないだろう。爆走しつつピジョットを恨んだ。2週間かかり何とかチャンピオンロードにたどり着いた。
「ああ、死ぬ、むり…でもやらなきゃ…」
俺は足を踏み入れたが大きな間違いだった。イワーク・ガラガラのオンパレードだったのだ。それも平均レベル50…
「おいいいいいいいい相棒!しっかりしろおおおおお!」
相棒は無力だった。
恐ろしいほど地面タイプに弱かったのだ。
「だめだ…水ポケモンが必要だ…ゼニガメが必要だ…育て屋から回収しよう」
5番道路まで爆走した。ゼニガメを回収するために
「10万円だよ」
育て屋は商売であったことを思い出した
「カードでお願いします」
俺はゼニガメを回収することに成功した
所持金ー130万円
ポケモン ピカチュウ55Lv ラッタ50Lv ゼニガメ99Lv
ゼニガメは強かった
「むひゃひゃひゃひゃひゃひゃ」
ゼニガメの波乗りは恐ろしく強かった。ポロックで集めたイワークを10匹まとめて波乗りで蹂躙すると3万円になるのだ。おれはチャンピオンロードでポロック波乗りシステムを活用し1か月で100万円ためることができた。
しかし悲劇は突然起きた。
「ポケモンが…出てこない…」
イワークが1日1匹、時々ゴルバットでは到底稼げない。
俺は初めてポケモンは限りある存在だと気づいた。
「あと最低30万…いや、生活費も含め50万ほしい…」
俺は悩みぬいた。
悩みぬいた挙句、目の前にそびえる塔を見つけた。
「チャンピオンって確か1回倒すと賞金10万円じゃなかったっけ…」
俺は再びポケモンマスターになることにした。
「チャンピオンの平均レベルは70程度、手持ち三体…いけるか?」
俺は当てもないためとりあえず四天王を蹴散らした
ゼニガメは恐ろしく強かった
波乗りのPP15
滝登りPP15
四天王のポケモン5×4=20
十分だった。
そしてチャンピオンと向き合った。
幼馴染のライバルだ。
「久しぶりだな…随分汚くなったな…」
ライバルはドン引きしていた。俺はぼろきれにごみ袋をぶら下げていたからだ。この2か月殆ど飯も食わず寝ずイワークを蹂躙していたため服はボロボロでリュックにも穴が開いていたのだ。一見浮浪者に見える俺を見て思わずドン引きしてしまったのだ。
しかし俺にそんな余裕はない
「波乗り」
ゼニガメは恐ろしく強かった。
波乗りと滝登りでライバルを蹂躙した。
すごい傷薬が厄介だったが何とか勝つことができた。
「今日からお前がチャンピオンだ」
ライバルは潔かった。晴れ晴れしい表情で賞金と王冠を渡してきた。俺は笑顔で賞金だけ受け取り「そのまま待ってろ」とだけ言い残し去った。ライバルはきょとんとしていた。
◇
1時間後ー
「勝負だ」
俺はライバルの前に再び戻ってきた
1階のポケモンセンターでゼニガメのPPを回復し再び四天王を蹂躙し戻ってきた。
「待て待て待て待て!お前さっきも来ただろ!もうチャンピオンだろ!」
ライバルはドン引きしていた。
「波乗り」
俺はライバルを蹂躙した。
すごい傷薬も底をついていたようで、はじめよりも楽だった。
「そのまま待ってろ」
「待て待て待て待て!え?お前何なの?何が目的なの?」
「そのまま待ってろ、あと3回で買えるから」
「待て待て待て!」
◇
そうして俺は何とか旅を終えることができた。
ライバルとは音信不通になったが、
今では会社員として安全な暮らしを送ることができている。
これは俺がポケモンマスターになるまでの旅の物語だ。