僕とサッカーとちいさなボール
僕はケイ。
10歳になり、初めてのポケモンを選ぶことが出来るってお母さんが言ってた。
でも、僕はそんなことはどうでも良くて、友達のタカシと一緒にサッカーをしていた方が断然楽しい。だって僕は大きくなったら、サッカーの選手になりたいからさ!
でも、お母さんは「ちょっとでも顔を出してみなさい。タカシくんと一緒に行けばいいでしょ。」ってしつこくて…。僕はしぶしぶタカシくんと予定を合わせてポケモンを見に行くことになった。
◇
ポケモンを見学に行く当日、タカシくんは家の用事が出来て一緒に行くことが出来なくなった。ほら、やっぱりつまんないんだ…そう思ってポケモンを見に行くのをやめようとした時だった。
ゴツン!
…ぼくの頭に衝撃が走った。
…頭にぶつかったのはモンスターボール?
いったい誰だ、こんなことするやつは。
見渡しても、どこにも誰もいなかった。どんどん頭にきた僕は、そのモンスターボールに渾身のキックをお見舞いした。その時のキックは、タカシ君と練習した時のキックよりもずっとずっといいシュートだと僕は思ったんだ。でも…蹴ったモンスターボールのぶつかったような音が聞こえなかった。本当ならどこかにぶつかってカランと音がするはずなのに、どうして?
…そう考えてるのもつかの間、
僕にまたそのモンスターボールが飛び込んできた!
「うわっ!」
僕は咄嗟に手が出てしまって、払ってしまった。
ちょっとだけ、手が痛い。
「一体誰なんだ!」
僕はもう我慢が出来なかった。そうするとポンポンとモンスターボールが飛びあがる音がしてそちらを見ると、上手にボールをリフティングして遊んでいるウサギがいた。
…いや、これってウサギじゃないぞ?!ポケモン…?
「ニバ!」
そのポケモンは何かを喋り、僕に笑いながらモンスターボールを蹴り飛ばしてきた。
さっきよりはちょっとだけ、取りやすいボールだった。
僕は慌ててボールの力を殺すように、リフティングをした。
「ニバー!」
そのポケモン(?)はにっこりを笑ってポーズを決めていたんだ。これって…。
◇
僕は数日後、このポケモンの名前を知る。
ヒバニーというのだ。
リュックにサッカーボールを載せ、
小さな赤いスマートフォンを片手に、新たな一歩を踏み出すことになった。
反対側の手には、赤いボール。そして、ヒバニーも一緒に。