概要
2002年7月13日から公開されたポケモン劇場版5作目。同時上映作品は『ピカピカ星空キャンプ』。無印編として、最後の『劇場版ポケットモンスター』である。劇場版のポケモンとして、ファンの間でも非常に人気が高く、各所で評価されることが多い本作だが、復興収入的には、第18作目の『光輪の超魔神フーパ』が公開されるまでの間、歴代ワーストを維持し続けることとなった。2017年に夏のポケモン特番3連発！の一環として実施された「推しポケモン映画ナンバーワン」（2016年までに公開された19作品の中から人気投票を行い、最も投票数を得た作品を1本放送するという企画）にて、見事1位を獲得し、作品の人気を証明した。また、劇場版ポケモン唯一のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞している。
ストーリー
世界で一番美しく歴史のある水の都、アルトマーレ。そこでサトシたちは、ポケモン水上レースに参加する。レースの最中にサトシに興味をもって近づくポケモン「ラティアス」がいた。「カノン」という少女に変身したラティアスはサトシたちを秘密の庭へと導く。サトシたちはラティオスやボンゴレ、本物のカノンと出会い、この庭と秘宝「こころのしずく」の話を聞かされる。
この秘宝を狙うおしゃれな怪盗姉妹ザンナーとリオン。2人はラティオスをとらえ、こころのしずくを奪ってしまう。アルトマーレに隠された封印は解かれ、町は封鎖され、水路は枯れはて、やがて大津波が押し寄せてくる。サトシとピカチュウ、ラティアスとラティオスは、この危機をどう乗り越えるのか！？
美しい水の都アルトマーレ、そこで暮らす人々の気持ちと、訪れる人々の未知への期待や好奇心を織り交ぜた、人間と水の都とポケモンが生み出すハートフルストーリー。
舞台：アルトマーレ
物語の舞台はアルトマーレで、イタリアの都市ヴェネツィアをモデルとしている。アルトマーレはイタリア語で「永遠なる海」を意味する。実在する都市をモデルとした作品は今作が初。
作品の持つ世界観だけで語るなら、劇場版ポケットモンスターシリーズ全体で考えても、本作品の横に並ぶ作品はまずないだろう。それほどまでに完成された美しい世界観が構築されている。
伝承
昔々、アルトマーレという島に、おじいさんとおばあさんがいました。
ある日、二人は海岸で、小さな兄妹がケガをしているのを見つけました。
二人は、おじいさんとおばあさんの手厚い看護で、みるみる良くなっていきました。
しかし、突然、邪悪な怪物が島に攻めてきたのです。
島はたちまち怪物に飲み込まれました。
と、その時、おじいさんとおばあさんの目の前で、兄妹の姿がみるみる変わっていきました。
二人はむげんポケモン、ラティオスとラティアスだったのです。
二匹は空から仲間を呼び寄せました。
彼らは邪悪な闇を追い払う力を持ってきてくれました。
それは『こころのしずく』という宝石だったのです。
島には平和が戻りました。
それからというもの、『こころのしずく』があるこの島に、
ラティオスとラティアスたちは、しばしば立ち寄るようになりました。
この島が、邪悪な怪物におそわれることは、その後、二度とありませんでした。
音楽
本作を語るうえで絶対に外せないのが劇中BGMだ。本作のBGMは日本のアコーディオニストであるcoba氏が担当しており、ポケモンのBGMとして他作品と比較すると異彩を放っているが、決して浮いているということはなく、作品の美しい街並みや雰囲気にベストマッチしている。その為、本作品のBGMは、本作自体の評価も相俟って、非常に評価が高い。特に、名曲『謎の少女、再び（迷宮）』は、印象的に耳に残っている人が多いだろう。
またオープニングとエンディングにもcoba氏が関わっており、作品全体としての雰囲気が完璧に統一されている。（『ひとりぼっちじゃない』coba & 宮沢和史、『めざせポケモンマスター2002』coba & 松本梨香）
キスの真相：ラティアス or カノン
映画のラストで、アルトマーレを後にするサトシたちの前に少女（ラティアス or カノン）が姿を現した。彼女はサトシとピカチュウのイラストを手渡し、サトシの頬にキスをした。全国の視聴者たちはこのシーンにときめかずにはいられなかったことであろう。映画公開後、ファンの間ではこのシーンの話題で持ちきりになった。果たして最後にキスをした少女はラティアスなのかカノンなのか。それは2017年現在も不明である。しかし、どちらにせよ素晴らしい描写であることに変わりはないし、この真相が分からない曖昧な描写こそが本作の魅力なのかも知れない。
余談だが、キスシーンにおいて使用されているBGMの楽曲名は「カノン」である。また、ラティアスとカノンを見分ける方法として、カノンは常に帽子を着用しているが、ラティアスは帽子を着用しない、という点がある。このシーンでは帽子は被っていないが決め手には欠ける。
