はじめに
今年もジメジメした暑さを呪う時期がやってきました。Sora.KENSHIです。
特にここ数日は、仕事柄各地方を転々とする関係で航空機を使う頻度が多くなったわけですが、昨日、こんなネット記事が出ていました。
ポケモンのボール管理緩和を――ポケモン愛護団体が主張
本日午前、各地方のポケモン愛護団体は連名で航空各社に対して書面を発行し、航空機に搭乗する際の手持ちポケモンの管理規則の緩和を検討するよう要請した。先週、ポケモントレーナーの乗客が航空機乗員と口論になった事案を念頭に置いたものであると主張している。カントー地方では、乗員からポケモンをボールに入れるよう命令されたことに対して乗客が反発し、これをきっかけとした口論により警察が出動、出発が大幅に遅れた事件が発生していた。(下線部は筆者編集)
結局、大元の口論は航空機の運航を妨害したとしてトレーナーの乗客が警察に連れていかれて一応の幕切れとなったわけですが、兼ねてからポケモン愛護団体を中心に、少なくないポケモントレーナーがポケモンをボールから出して航空機に乗らせてほしいと主張していました。実際、一部のLCC(ローコストキャリア / 格安航空会社)などはポケモンのボール管理規則を緩和しており、中には実際に規制緩和便を運航している会社もいます。
ただ、一方でFSC(フルサービスキャリア)を中心とした多くの航空会社は非常に腰が重く、中には「運航の安全に関わるので絶対に緩和はしない」と明言する会社もいます。
航空機の外では、空港警備や地上係員補佐、航空機整備補佐などにポケモンを活用する事例は数多くありますが、こと飛行中の航空機の中に関しては、ポケモンを事実上閉め出している会社が多いのが現状です。
実際として、ポケモンと航空機の安全運航の関係性の理想点はどこにあるのでしょうか?
今回は、そんなところを考察も込めてまとめてみたいと思います。
現状のポケモン管理規則
さて、まずは現時点での航空機内でのポケモン管理の状況をおさらいしましょう。
航空各社によってある程度の差異はあるものの、おおよそ同じ内容の条文を自社の運送約款に取り入れています。以下はガラル地方に本社を置くマクロコスモス・エアラインズ(以下『MCA』とします)の運送約款からの引用です。
第35条 携帯獣の管理
- 旅客に同伴される携帯獣は、会社の認可を受けたモンスターボールに収納されなければなりません。ただし、航空機運航責任者の認可を受けた場合は、この限りではありません。
- 会社は、第1項に基づく収納命令を旅客に発することができます。また、旅客がこれを拒否した場合は、搭乗を拒否することができます。
例えば、先に引用した事件ではこの種の条文が適用されて搭乗拒否と相成ったわけですが、搭乗拒否の事例はこれが初めてではなく、平均で年に数回程度発生しています。
また、LCCなどを中心にポケモンの同伴を認めている会社でも、ポケモンの種類や特性、大きさ、重量、使用する技などの厳しい条件をクリアすることを求めており、実際に同伴が認められるケースは正直多いとは言えません。
なお、仮に同伴が認められた場合でも、機内でのポケモンの管理については、トレーナーではなく航空機の乗員の指示が優先されるという形を取っており、乗員の命令はたとえトレーナーやポケモンの意思に反するものであっても実行されなければなりません。もちろん、拒否したら乗れないし飛んでた場合は即行で近くの空港で降ろされます。
さらに、ポケモンと比べると余り注目されていませんが、実はモンスターボールにも制約があります。例えば、上記引用をよく見ると「会社の認可を受けたモンスターボール」と表現されているのがわかるでしょう。
これは、航空各社が「性能に問題がなく、信頼性も担保されている」と認めた製造メーカーが作った正規品のボールのことを指しています。そのため、例えば、ぼんぐりを使って職人が自作したモンスターボールは、ボールの性能を客観的に評価できない非正規品扱いとなり、会社が使用を認めるボールには当てはまらず、航空機に乗る際に使用することはできません(何年か前にこの種のボールで飛行機に乗ろうとした乗客と揉めた航空会社があったような……)。
この場合、会社が貸し出す正規品のレンタルボールに一時的に収納して到着先で返却する仕組みが作られていたり、空港によっては、到着先にポケモンを事前に転送するサービスを敷いている場合があるので、それを利用することを勧められます。
以上のように、ポケモンの同伴は非常に厳しい制約が設けられてり、最初からボール管理を求めている会社はもちろん、同伴は認めても厳しい諸条件をクリアしないといけない場合が多いのです。
現在、全ての航空機はモンスターボールへの通信アクセス回線の設置が義務化されており、機内に等間隔に備わっている専用ルーターからボールに遠隔ロック信号が常時飛んでいます。
なぜここまで厳しい制約を?
では、なぜここまでして航空会社は機内にいるポケモンを外に出したがらないのでしょうか?
その理由はやはり、ポケモンは、やろうと思えば簡単に航空機を破壊できてしまう、という一点につきるでしょう。
例えば、航空機の旅客運航黎明期には、その種の事故や事件は残念ながら頻発していました。
同伴として乗せたライチュウが飛行中の機内の気圧変動や揺れのストレスに耐えきれずに放電した結果、電子機器がショートを起こして操縦不能になった事例や、最後尾の座席にいた乗客が、離陸直後に誤ってボールからイワークを出したせいで重量バランスが崩れて失速し墜落した事例、果ては、ギャロップがトレーナーの意思に反してほのおタイプのわざを繰り出して(理由は不明)、機内を火炎地獄に追いやって墜落した事例など、枚挙に暇がありません。
また、自殺などの目的から意図して墜落を狙って機内でポケモンを出して、技を使って内部から破壊した事件も、残念ながら少なからず存在します。
これらの事例は、決して意図してやったものばかりではなく、過失によって起きた事例も多いうえ、わざを出さずともそこにいるだけで多大なリスクとなっているのが実情です。航空機の場合、問題が起きてしまった時点で手遅れな場合が多いことから、如何にして事前に危険を排除できるか、そして起きた問題をどれだけ最小限にできるかが安全運航そのものに直結します。
そう考えると、トレーナーやポケモンの意思に関わらず、
- ポケモンがわざを出すだけでなく、機内にいるだけでトラブルになるリスクがある――例えば重量が重いポケモンは小型旅客機にとっては恐怖の存在
- いつポケモンがボールから出るか、もしくはわざを出すかという予測が完全にできない――完全に出来ない時点で、航空機の運航上大きなリスク足りえる
- わざが出た時点で、航空機の安全は大きく損なわれる場面が想定しやすい――なんせ客室に人の頭ぐらいの穴が開いただけでも運行上危険な水準になりますから、ポケモンのわざの大半は航空機にとって十分致命傷足りえます
- ポケモンの破壊可能行為の大半は継続性を持たせることが可能――つまり何度もわざを出して継続的に破壊行為を実行できる――であるため、航空機/運行管理者側で被害を制御しにくい
という風に、ポケモンと飛行機は非常に相性が悪いという風に解釈することが可能なのです。
かといって、ポケモンを持っているトレーナー全員を搭乗拒否なんてした日には、全国的な反発を喰らうばかりか航空会社にとっても売り上げ的に大損害なのは目に見えているわけですから、その妥協として、現在のボール管理の徹底という規則が敷かれた……というのが、これまでの航空機とポケモンの歴史なのです。
今後はどうすれば?
とはいえ、ポケモントレーナーとしては可能な限り一緒に空の旅を楽しみたいというのが本音でしょう。
例えば、私の地元であるシンオウ地方の統計会社が出した調査によれば、現時点でのポケモンのボール管理に理解を示すと回答した人が『81%』に達した一方、そのうち、飛行機にいる間はポケモンをボールから出したいと答えた人は、実に『68%』にも上ったという結果が出ています。
必ずしもポケモンを外に出して管理している人ばかりではないにせよ、大体の人は手持ちのポケモンのうち一匹や二匹ぐらいは外に出してコミュニケーションを取っていたりするわけです。
わかります。気持ちは非常によくわかります。
うちのニンフィアなんかも、陸棲ポケモンなので空は飛べないのですが、そのせいか空の景色にすごく憧れてて、飛行機に乗る時は毎回そこから見える空の写真を撮って、降りた後に写真を見せて機嫌を取っています。でも、やっぱり本物が見たいですよね。
航空各社でも「今後はどうしようか?」という対応は割れてて、最初に述べたように、FSCを中心にしたの大半の会社は規制緩和は認めないという姿勢を崩していません。
しかし、最近はその風潮も変わりつつあります。こちらも先に述べた通り、少しでも客を集めたい新興LCCなどは、可能な限りの安全を確保しつつポケモンを外に出すことを認める動きを見せている他、実は、腰が非常に重い傾向があるFSCでも緩和を検討する動きがみられるのです。ここでは、その緩和案の一例を見てみましょう。
特定条件認可制
現在主流の緩和策で、航空会社が定めた各条件をクリアした場合に限り、ポケモンをボールの外に出しての同伴を認めるというものです。
その条件は多岐に渡っているので全部は書き記すことは不可能ですが、MCAが設定している『携帯獣同伴特定認可条項』から一部抜粋してみます。
(中略)
第3条 以下の条件を満たす携帯獣については、航空機内におけるボール外での管理を認める。ただし、航空機運航責任者が必要と認めた場合はこの限りではない。
- 大きさが一定基準以下であること。詳細は別添1参照(筆者注:結構細かく規定されていますが、端的に言えば人と同じかそれ以下の大きさであること、と読めます)
- 体重が一定基準以下であること。詳細は別添1参照(筆者注:これは搭乗機体のタイプやポケモンの重さ、果ては座席位置によっても変わるため非常に複雑です)
- 取得しているわざの一覧を規定フォーマットに従い提出すること。また、わざの種類によってはボール管理を指示されることについて同意すること。
- 同伴中は搭乗者自身の手で持つか、隣の座席に座らせること。
- 座席に座らせた場合は、別途指定される料金表(別表4)に基づく座席使用料を支払うこと。
(以下中略)
……と、この下に20項目続いています。航空各社によって差はありますが、基本的に同じ内容です。
ここで一番ネックになりそうなのは第3項『取得しているわざの種類』で、航空機を損壊させられる、もしくは乗員の航空機運航の職務を阻害させられるわざを取得している場合は、他の条件をクリアしていても基本的にはボール管理を指定されます。(これを『特例拒否規定』と呼ぶそうです)
この条件が基本的に厳しく設定されているため、実際にポケモンを外に出していいと認められるのは、両腕で持てるぐらいに小さく、使用するわざがほとんどないポケモンばかりというのが実態だそうで、そんな条件を達成できるポケモンはむしろ少数派です。
その結果、例えばMCAの場合は、この条項をクリアしてポケモンの同伴が認められるのは、同伴申請を出した乗客のうち2割程度という統計が出ています。一番普及している方法ですが、ハードルは相当高そうです。
事前登録制
そんな特定条件での認可制が主流の中で、最近注目されているのが事前登録制度で、元々はエアマーシャル採用時に行っていた審査制度の民間版です。
最初の認可制とやることは大きく変わりませんが、事前登録制では各会社に同伴許可を受けた利用客として登録してもらうことを目指します。また、認可制が当日申請でも対応してくれるのに対し、事前登録制は最低でも1ヵ月前の申請を要求しています。
その大きな特徴は、事前に『個人の信頼性確認』が行われる点です。
個人の信頼性確認とは、特定の発電所など重要施設に立ち入る際に採用される制度で、各重要施設に立ち入る際に、アルコール検査や薬物検査、個人面接などを行ってその人が施設に脅威となるか否かを判定します。
事前登録制ではこの制度を流用しており、各手持ちポケモンの審査だけでなくトレーナーをも様々な観点から厳しく審査します。トレーナーの犯罪歴や職歴、素行、果てはポケモンとの関係性まで細かく審査対象となり、これをクリアすると、航空会社から『同伴許可登録証』が発行されます。搭乗時はこれをIDカードホルダーに入れて首から下げることを求められます。
この制度のメリットは、登録証を持っていることで搭乗毎に行われるポケモンの同伴審査が免除されることや、特定条件認可制で定められる各条件の一部が緩和されることです。
例えば、上記したような特例拒否規定が大幅に緩和され、これだけでも同伴できる可能性が一気に高くなります。さらに、(もちろん限度はありますが)ポケモンの管理に必要と認められれば、会社側に必要な要望を出す権利も与えられます。例えば、本来は自費で用意するポケモン用の絶縁性フード付きコートなんかも搭乗時に貸し出してくれます。
一方、この登録証は1年ごとの更新制となっており、その度に検査料として数万程度の費用が掛かるのがネックです。更新が必要な免許や資格みたいなイメージですね。
そのため、お金の面で人を選ぶ制度となっており、誰もが使えるものではありません。しかも、制度として出来たばかりなためか現状は審査基準がわりと頻繁に変わっており、その度にお金をかけて審査をやり直す必要があることから、お世辞にも使い勝手がいいとは言えません。
制度として成熟するには、もう少し時間がかかりそうです。
機体そのものを強化
全く別角度からの緩和案(に入れるべきか迷いますが)として、機体そのものをポケモンの同伴に耐えられるように出来ないかと検討されています。
一部の航空機メーカーが練っている将来的な次世代大型機構想の一つとして、機体構造や素材を改良して幾つかのポケモンのわざなどを受けても耐えられるようにする案を検討しています。
名前の通り大型機限定ですが、これは構造強化や使用素材の関係によるものだそうで、代わりに各タイプのわざに最大限耐えられる機体にしようという目論見です。
これが実現すれば、上記したような特例拒否規定をほぼ完全に撤廃できるうえ、場合によっては大型機ゆえのキャパの大きさを利用し、座席を大きくして少し大きなポケモンの同伴も可能にできるので、ある意味夢みたいな構想です。
ただ、大型機のみのため乗り入れ可能な空港は限定されますし、大型化に伴い導入額も嵩張りがちなので、一番儲けてるFSCぐらいしか導入できませんが、肝心のFSCは規制緩和に乗り気じゃないので相性最悪です。
そもそも、近年は大型機の需要は減っていて、中・小型機を主力とした高頻度運航の時代となっている中では、わざわざ大型機を別個で導入したがる会社は多くないと思われるので、文字通り夢みたいな構想に終わりそうな気配です。
なお、折衷案として、既存の中・小型機の一部を素材改良や構造強化して同伴可能区画を作る案もありますが、中途半端な改造は機体の重量バランスを崩すなどの理由から去年から研究が難航しているらしく、続報が飛んできていません。これも構想で終わりそうです。
まとめと個人的意見
以上のように、ポケモンと飛行機の相性はお世辞にも良いとは言えない中でも、どうにかしてポケモンと一緒に空を楽しむことはできないかと様々な工夫が考えられており、一部は実行に移されているのを紹介してきました。本当はもっと多くの緩和案が考案されているのですが、全部をまとめると長くなってしまうので、メインとなる3つを例として挙げて終わりとします。
個人的には、飛行機そのものがポケモンの同伴に耐えられるようにならない限りは、同伴の制限もやむを得ないと考えております。
ルールや規制技術などのシステム面の進化により、ポケモンが原因の墜落や飛行機の損壊などの事例はほぼなくなったとはいえ、未遂に至った事例はい未だに度々起きており、これが原因で「飛行機に乗りたくない」と言っている人も少なくないのが現実です。
緩和するにしても、その大前提として航空機の安全が担保されていることは絶対条件とすることに異論はないというか、そうでもしてくれないとトレーナーである自分も安心して飛行機に乗れません。
今後、技術の進化によりポケモンの同伴にあらゆる意味で耐えられる飛行機が生まれた時、初めてポケモンと飛行機は『和解した』と表現できるでしょうし、将来的に、そんな日が来ることを願ってやみません。
以上、長くなりましたが本日の趣味考察を締めたいと思います。
ポケモンが遠慮なく空の旅を楽しめる日が来ることを願って。閲覧ありがとうございました。
こういう問題見ると改めてバトルサブウェイが異常だったことに気付かされるな。イッシュ地方のノリで動く気質とバカデカスケールが奇跡的に噛み合ったってのはそうなんだけど、そもそも電車の中でバトルするって発想おかしいよ。実際。電車の中でバトルするなよ。
まぁあの電車バカほど頑丈だし…電車の中で戦うのは完全にあの二人(サブウェイマスターのノボリさんとクダリさん、バトルと電車が大好き、そして強い)の好みというか夢?だろうし…
イッシュ・ロコモーティブ社の車両が頑丈になったのは、電気機関車時代に電気ポケモンで動くモーター制御装置が前進3段(いわゆる弱中強)しかなく、中以上のパワー(牽引力1000馬力超えとも)で試験運転で列車が千切れた事が、客車強度を増強するきっかけになったという。
また、運行した地下鉄ではしばしば乗客同士のポケモンバトルが起きるので、円滑な運行のためにより頑丈でどんな技も車体に影響を及ぼさないバトル対応車両が作られ今日に至るようになったという…。
技術の進歩に期待してるよ。
今はタイプに特化した研究をする学校も多いんだ。うちの地方の紹介になるけど、ミアレシティに電気タイプの天才児ってのが居てね。
僕の故郷の街には、彼が留学してた電気ポケモン専門学校がある。彼が卒業研究で作ったシトロニックシャワーっていう、電気ポケモンが電気をあびれる機械が、町中についてるよ。街の地下にはケーブルが通ってて…。(ロケット団とかいうのに狙われたこともあったから、それで全国ニュースになって知ってる人もいるかな?)
特に凄いのがその子が10歳そこらでこれを発明したってことさ。
とにかく、今の技術の進歩のスピードは本当に凄いんだ。期待できると思う。
一昔前だとそらをとぶポケモンにつけられる乗りかごみたいなのが売ってて、それに陸棲ポケモンを乗せて空からの景色を見せてあげられるみたいなのがあったな。
ただ、落下事故が相次いだとかで発売禁止になったらしいけど。
どうしても普段と違う環境っていうのはポケモンも興奮しちゃうんだろうな。
それをトレーナーがちゃんと抑えられるかどうかが今後の問題解決のカギになりそう。
こういうのは、災害時の避難にも言えるよね。置き去りにしてしまうのは可哀想だし、連れて行ってあげたいのがトレーナーの性。
しかし、ただでさえ時間のかかる移動中ボールに閉じ込めっぱなしも可哀想だよね。本当はボールから出して自由にしてあげられるのが一番なんだろうけど…
アレルギーの人もいるだろうし、自由にしたことでトラブルが起きても大変。
その辺をどう折り合いつけていくかが、これからの課題だと思う。