Trance Cell Journal 2020年11月号 にてお伝えした2つのニュース「バケッチャが恋したのは… 悲恋に涙」「「冥王の奇跡だ」悲恋のバケッチャ、意外な結末」に関して、バケッチャの飼い主であるルーベル氏が手記を公開した。
TCJ11月号を読んでいない方は、まずニュースをご覧ください。
恋するバケッチャ
著:ルーベル
俺はカボチャ農家をやりながら家族と一緒にミアレに住んでいるんだが、この仕事やってるとさ、出るんだよ…バケッチャが。
その内の一体がどうも娘に懐いちまったらしく、「飼っていい?」とか言うんだよ
…ご丁寧に「ヴァレリー」なんて名前も付けちまって。
なんでヴァレリーかって?
クルクル回ってヴァレリーナみたいな女の子だからだって。
ま、それはいいんだよ。別に害になるゴーストでもないしな。
問題はここからだよ。
ちょっと前にハロウィンがあっただろ?
でっけえカボチャも採れたし、娘も喜ぶだろうと思って、バケッチャ型のジャック・オー・ランタンを作ってやったんだよ。そしたら娘より喜んだ奴が居てな…
そう、ヴァレリーだよ。
ヴァレリーの奴、すっかりランタンが気に入っちまったらしくて、周りを飛び回ったり、その場でくるくる回ったり、目をピカピカ光らせたりしてるんだよ。後で調べたら、それ、バケッチャの求愛行動なんだそうだ。
いや、ちょっと待てよ。
ランタンだぞ?
反応もしない、動きもしない、ただ光るだけのランタンだぞ?
それでも健気に周りを飛んでるんだよ。毎日毎日。
もうハロウィンはとうに過ぎちまって、ジャック・オー・ランタンの時期でもねえ。色も段々黒くなってくる。そんなランタンの周りをだよ。毎日毎日。なんかもう不憫で仕方がねえ。
だから祈ったよ。
ああ、アルセウスでもゼルネアスでもなんでも良い。
あの不憫なバケッチャに救いを、ってな。
もうランタンはランタンの形もしていねえ。ヴァレリーはランタンをじっと見つめている。もう時間は深夜だ。ランタンは地面と同じ色になっちまって。くたびれて、くたびれて…
そうしたら…出てきたんだよ、
地の底から、闇が。
闇にランタンが吸い込まれて、空間に、穴が空いた。そこから…出てきたんだよ、バケッチャが。
は?と思ったよ。
そんな出来過ぎた話があるのかって。
アルセウスかゼルネアスの仕業か?
いいや、あの闇は間違いねえ。ギラティナだ。ギラティナの計らいだってな。
だから、俺は新しいバケッチャに、「ギラティ」って名前を与えてやったよ。俺はギラティナの奇跡を目の当たりにして、ヴァレリーはギラティというパートナーを得て。めでたしめでたし
…と思ったら、ギラティナの奴、少しイタズラをしたんだよ。
ギラティ、メスなんだよ。
ヴァレリーはそんなこと全然気にしてねえみてえだけどな。今日も周りを飛び回ってた。ギラティはさすが冥王直々の子、クールなもんだよ。ぜんぜんつれねえ。
頑張れよ、ヴァレリー。