イーブイといえば一般的には「可愛いポケモン」の代表格だろう。
わたしのイーブイは違う。違うということにしてほしい。可愛いと言われたくなくて可愛い振る舞いを避けているんだ。
そんなイーブイだが、進化先はニンフィアがいいらしい。可愛いオブ可愛い。可愛いの具現。ピンクでリボンは可愛いの証。可愛いと言われたくないポケモンがなりたがるのはおかしいと思われるだろう。
きっかけは劇だ。学校であった芸術鑑賞鑑賞会。内容はガラル人なら誰でも知っているニンフィアの邪竜退治。正直ありきたりだ、イーブイも思わずあくびをしていた。幕が上がるまでは。
圧倒的だった。邪竜役のサザンドラの容赦の無い、客席まで焼き尽くさんとする(ように見える程の演技力だった)大技。それを華麗な、且つ隙のない動作で躱し、時に反撃をするニンフィア。
ここは本当に劇場か?スタジアム……いや、ワイルドエリアかと錯覚してしまうほどの迫力だった。
そして遂に邪竜を打ち倒したニンフィアは、国に帰り沢山の賞賛を浴びて幕が下りる。
ニンフィアは、一般的には可愛いポケモンだろう。
でもあの日からわたしたちにとっては、誰よりもかっこいい理想の騎士なのだ。
そんなわけで、ニンフィアに進化するため日々特訓をしているわたしたちだが、困っていることがある。それは、進化方法だ。
ご存知の通りイーブイがニンフィアに進化するには、十分に懐いていることとフェアリータイプの技を覚えている必要がある。
……そう、フェアリータイプの技だ。イーブイが覚える技といえば、「つぶらなひとみ」と「あまえる」の2つ。可愛いと言われたくないわたしのイーブイは、可愛い技の習得にかなり難儀している。
今までも「ほしがる」を使えば恐喝現場、「しっぽをふる」を使えばアイアンテールの素振りなどと散々な言われようだった。
練習中の「つぶらなひとみ」は友人たち曰く、「にらみつける」「こわいかお」「特性:いかくのイーブイ」などなど。イーブイ、満足気な顔をするんじゃない。
果たしてわたしのイーブイは「つぶらなひとみ」を習得できるのだろうか。まあ、気長に頑張るしかないのだろう。騎士の道は長く険しいとどの絵本にも書いてあった。
世界一かっこいいニンフィアになるために、今日もわたしたちは眼力を鍛え続ける。