社畜のおっさんの語りをちょっと聞いてくれや。 なんかの質問スレで俺の相棒がグソクムシャだって話をしたと思うんだけど、そいつの話な。 まだグソクムシャが俺の相棒じゃない頃、仕事の関係でアローラに出張になったんだ。 その時の俺はちょっとな、色々あって沈んでた時期でさ、俺自身は普段通り過ごしてたんだけど部長の「息抜きも込めてアローラ出張行ってこい、どうせお前独り身だろ」ってサンダーの一声で決まった。 十何時間か飛行機の上で過ごして、アローラ地方に降り立った時のあのカラッとした陽射しの暑さは忘れられない。というか太陽が色から違う気がした。 よく子供がクレヨンで太陽を描く時、赤とかオレンジ色で表現するけど、俺にはアローラ地方の太陽はRGBの値をMAXにした白色っていうか、白く燃えているんだけどプリズムの虹色というか……まあとにかく凄く綺麗だったんだ。 俺はまずアローラの太陽に圧倒されてから、職場指定のホテルに行って荷解き。 時差の影響で寝れないだろうな〜とか思ってたんだが、シャワー浴びてさっぱりして、ベッドに横になったらぐっすりだった。 んでアローラでの仕事だけど、これは守秘義務があるから詳しくは話せないんだが、びっくりしたのは全部リモートでの会議だった。 メールに指定されたネット会議室に入って、そこでワイワイと。 どうやらアローラ地方は土地と一部のポケモンの関係上あんまり土地開発をする事ができないらしくて(ポケモンリーグアローラ支部の開設がすごいレアケースだと聞いた)こういうリモートワークは珍しくないらしい。 だから出社する必要も無いし、仕事の出退勤の報告は俺と先方から業務完了のメール一本で済むとかいう凄い世界だった。 と、そんな仕事をしてるとコツコツ積み立てしてきた社畜根性はめちゃくちゃ暇を持て余すわけで。 陽の落ちて少し涼しくなった夕方に、俺はちょっと部屋の窓から見えた海辺を散歩したくなって外に出た。 俺の住んでる地元では海の注意事項って言うと「メノクラゲ注意!」とか「サメハダー注意!」みたいのなんだけど。 「落ちてるスコップを拾ってはいけません!」とか。 「ナマコブシにちょっかいをかけてはいけません!」 みたいな変わった注意事項で。 思わずカメラで撮影しちゃった。 砂浜を歩いてると、びっくりするほど綺麗でさ。 いや砂もそうなんだけどゴミが落ちてなくて驚いたんだ、そりゃ流木の1本や2本は見かけたけれど、それにしても人の営みの中で出る小さなゴミの1つすら落ちてない真っさらな砂浜。 なんというか、この島に住んでる、遊びに来ている人達にきっちりと大切にされてるんだな……って思ってジーンときちゃってさ、近場の良さげな岩場に移動してぼんやりと海を眺めてたんだ。 そしたら視界の端に白くて素早い何かがチラチラと映って、何事かと思ってそっちに目を向けたら、後の相棒になるコソクムシと目が合ったんだ。 ジトっとした目付き、ぴょんぴょんしてる2本の触角、そしてブラシみたいなちょぼちょぼした口もと……。 瞬間! 俺に電流走る! なんだこいつは!!? アホほど可愛くないか!!? 予習で読んだアローラガイドブックにこんな可愛いポケモン載ってなかったやろがい!!! 俺が思わずボールを構えると、コソクムシはぴゃっと逃げ出す。 ちょぉ待てィ!!! 逃げ足はっや!!! だがそこがいい!!! 岩場でバタバタとコソクムシを追いかけ回してたら、ヤンチャしてそうな地元の兄ちゃん姉ちゃんが声を掛けてきた。 俺が「この岩場で見かけた白くて平たくてめっちゃ速いポケモンを捕まえたい!」って言ったら兄ちゃんの方が「オッサン見る目あるッスね」って言って捕まえるの手伝ってくれた。 オラァ! 観念しろウルトラキューティーちょぼちょぼお口め!!! 3人に勝てるわけないだろ!!? うわ突破された! あっちだこっちだギャーギャー……。 3人でも勝てなかったよ……。 でもそんな俺たちはかなり目立ってたのか、次はすげぇ大柄でいかつい兄ちゃんがやって来てさ、さっきまで手伝ってくれてた兄ちゃん姉ちゃんがペコペコしてたから兄貴分みたいなもんなんだと思う。 最終的にその大柄な兄ちゃんも手伝って、俺は無事ハイパーウルトラシャイニングスターキューティーキューターキューテストちょぼちょぼお口のコソクムシ(コソクムシって名前は大柄な兄ちゃんが教えてくれた)をゲットした。 俺は兄ちゃん達にめっちゃありがとうありがとう!ってそれぞれ握手して腕ぶんぶんしてさ、本当はご飯奢ってあげたかったんだけど、近くに開いてる店が無くてさ、自販機で各々好きなジュースを俺の金で買ってもらって、早速ゲットしたコソクムシと一緒に飲みながら色々だべってた。 まあほとんど中身が無いか、俺がコソクムシの何処に一目惚れしたかをまくし立てるように喋ってたような記憶しかないんだけど、兄ちゃん達は「馬鹿だな」とか「スかしてんな」とか相づち打ちながら聞いてくれたんだ。 んで改めて3人にお礼を言ってさ、俺はホテルに戻って行ったんだ。 その日以来、出張中は夜中に兄ちゃん達を見ることは無くなっちゃって、最終日もさようならありがとうが言えなかったから、TCBの場を借りて改めてあの時はありがとうと伝えたい。 今日はコソクムシのゲット記念日、今では立派なグソクムシャに進化した。 あの時助けてくれた兄ちゃん達本当にありがとう、今でもおっさんは社会の小さな歯車やってるけど、相棒であるグソクムシャのお陰で毎日が楽しいよ。 もしまた出会えたら、俺のグソクムシャの自慢に付き合って欲しいな! 追伸 あの時「(いかつい見た目なのに好きな飲み物アホほど可愛くないか!!!????!!!??!?)」って心の中でギャップ萌えにキュンキュンしてました。 この場を借りてめっちゃ謝りますゴメンね!!!