匿名
2023-06-28 01:26:23

ギャロップ女

俺にはちょっと変な趣味があった。その趣味っていうのが、夜中になると家の屋上に出て、そこから双眼鏡で自分の住んでいる街を観察すること。いつもとは違う、静まり返った街を観察するのが楽しい。 家の前の坂道に設置されてる自動販売機を双眼鏡で見ながら「あ、大きなドクケイルが飛んでるな?」なんて思っていたら、坂道の一番上のほうから物凄い勢いで下ってくる奴がいた。 「なんだ?」と思って双眼鏡で見てみたら、コイキングの被り物みたいな変な帽子をかぶった若い女が、腕をぶんぶん振りつつ、ギャロップみたいな猛スピードで走ってくる!明らかに人間の速さじゃない! ちょっとの間、あっけに取られて呆然と眺めていたけど、なんだか凄くヤバイことになりそうな気がして、俺は慌てて一階に降りた。 「うわーどうしようどうしよう、なんだよあれ!!」って怯えていたら、その女が「私は運転者ではありません!私は運転者ではありません!」って意味不明なことを叫びながらズダダダダダダッって家の敷地に入ってきて、そこから急にスピードを落とすと、今度はゆっくりした足取りで家の周囲を徘徊し始めた。 そのとき俺は気付いた。うちにはアンノーンっていう珍しいポケモンがいるんだけど、まさかこいつが目当てじゃないかと思って、呑気に寝てたアンノーンを急いでモンスターボールにしまった。 ガクガク震えながら息を潜めていると、数十秒くらいで「見つかりませんでした。他のポケモンを探してみましょう」っていう妙に冷静な声が聞こえてきた。 しばらく女が家の周りをうろついている気配があったけど、やがて元の静かな状態に……。それでも当然、緊張が解けるわけがなく、日が昇るまでモンスターボールを握りしめたまま硬直していた。

 あいつはいったい何者だったんだ。もう二度と夜中に双眼鏡なんか覗かない。
\イイね!/
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