2023/06/14 21:01

絵本@TCB洒落ゴス

※この話はフィクションではありません

この怪談はアローラの友人伝いに、実体験という触れ込みで知った話だ。
と言っても、10年以上前に行方不明だった知人がある日急に姿を現して絵本を一冊手渡してまた居なくなった、というだけのシンプルな内容だった。

※以下のうち、一部あるいはすべての部分を、関係者から公開の許可を得た上で掲載しています
※この話はフィクションです

なんとなく気になるのは、その時に渡されたものとして見せられた絵本の方だった。
「絵本」とはいえ、全編がイラストと簡単な文章で構成されているという形式上そう呼んでいるだけだ。1ページ1ページが薄く自分が見た時にはもうぼろぼろで、冊子のような作りになっており、いわば素人が趣味のために作った同人誌…いや、コピー用紙に印刷したものを手作業で留めたような様相だった。
絵本として作られたようだが、タイトルのみで作者名や奥付なども記載されていなかったあたり、差し詰め幼い家族に向けて作ったもの、と言ったところだろうか。

現物は自分の手元には無いが、友人の話を聞いた時に資料用に写真を撮ったので、それを見ながら内容を書き起こす。
少々読みづらいが、なるべく原文をそのままに書き起こす意図のためご了承願いたい。

『ひとりぼっちのくいしんぼうくん』
「むかしむかし から、ハウオリシティ では にんげん と ポケモン が なかよく くらして いました」
「ポケモン の くいしんぼうくん も そのうち の ひとりです」
「くいしんぼうくん は、にんげん、ポケモン、たくさん の かぞく と いっしょに くらして いました」
「くいしんぼうくん は とっても たくさん たべます」
「かぞく の みんなも、くいしんぼうくん が おいしそうに たべるのが すきで、たくさん ごはん を あげました」
「けれど いつのまにか くいしんぼうくん は ひとり に なって いました」
「まち には だれも いません にんげん も ポケモン も みんな いなくなって いました」
「くいしんぼうくん は さびしくて ぽろぽろ なきました くいしんぼうくんの おなか は ぺこぺこ で ぐう と なりました」
「ぐうぐう ぽろぽろ ぐうぐう ぽろぽろ」
「おなか が すいたなあ」
「みんな に あいたいなあ」
「なきながら、くいしんぼうくん は そばにあった ごはん に てを のばしました」

(裏表紙に手書きの文字で)
「この ほん を よんだ ひと へ
くいしんぼうくん と おともだち に なってあげて ください
くいしんぼうくん に ごはん を あげて ください」

撮影者によるメモ
・描かれたイラストは、背景が表紙の空と思われる鮮やかな青から段々と彩度が落ちていくと同時に、ページの中に登場する人間やポケモンの数も減っていく。
・『ひとり に なって いました』のページ以降は「くいしんぼうくん」以外の存在が確認できず、背景も砂嵐のような茶色やグレーのみの色使いとなっている。
・「くいしんぼうくん」の姿は他の人間やポケモンよりサイズが大きく描写されており、黒・黄・青の体色で統一されているが、現在ハウオリシティでは該当するポケモンの生息は確認されていない。

「そう言えばあいつが居なくなった時、ポケモンに食われただなんて物騒な噂が流れて家族が怒ってたな」
撮影を手伝ってくれていた絵本の持ち主は、思い出したように最後にそう呟いていた。

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スレ主です モキュメンタリーっぽい感じに話をまとめたかったんだけど難しいね…まあほぼフィクションになったんだけど

※この話はフィクションです

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