私の友達にはどうやら小さい頃からずっと一緒に育ってきた大事な大事なポケモンがいるそうです。
なんのポケモンなのかと聞いても「ナイショ」の一点張りで教えてくれません。ヒントは？何タイプ？どの質問にも全部「ナイショ」と答えます。次第に彼女の周りの人達は彼女に大事なポケモンがいるだなんて嘘だと思い始めました。そして遂には誰も彼も彼女に大事なポケモンがいるだなんて話は忘れてしまいました。
ある日、彼女は学校を休みました。
次の日には登校してきました。でもずっと顔を隠しています。先生は登校してきた彼女の姿を見ると悲鳴をあげました。なんでいるの、と震えた声で呟いて教室から走り去って行きました。クラスはザワザワと騒がしくなりました。中にはどうして顔を隠してるんだと不審そうに尋ねる者もいました。
先生が戻ってくると授業が始まりました。でも先生は彼女を見えていないかのように振る舞いました。出席確認の時、彼女の名前は呼ばれなかったのです。
放課後、私は彼女のお家を訪ねました。彼女のお母さんが出てきてくれました。なんだか顔色が悪くて大丈夫ですか、と聞いたら泣いてしまいました。
私は信じられなかった。
彼女は昨日死んでしまったらしい。
じゃあ、じゃあ、今日学校に来ていたのは誰？
帰り道、曲がり角を曲がると”彼女”が前を歩いていました。
私は思い切って声をかけた。
「あなたはだあれ！」
“彼女”は振り返りました。
私は思わず息を呑んだ。
「ナイショ」
“彼女”は泣いていた。その顔は……◯◯◯◯だった。「ナイショ」にしていた彼女のポケモンだった。