長年付き合っていて、同棲していた彼女とつい最近別れました。喧嘩別れです、といってもどちらが悪かったとかそういうのでもなくて、ただ日々の中で積み重ねられていった小さなズレやすれ違いが限界に達したんだと思います。
叩かれた右頬と、掴まれた左手首の痛みはもう引きましたが、心にぽっかりと穴が空いたような感じがして無くなりません。ベッドにふたつ並んだ枕とか一緒に買い換えた歯ブラシとか、彼女のことを思い出してしまうものが部屋に沢山あるからかもしれません。
全部捨ててしまって心機一転、という訳にもいかないのが、彼女と私で一緒にゲットしたイーブイの存在です。傷つき弱っていた、まだ赤ちゃんだったイーブイを大慌てで家まで連れ帰り、手当した日のことをつい昨日のように思い出せます。怪我が治ったイーブイを野生に返すか、ふたりで育てるか話し合いましたが、その相談をしていた彼女の膝の上にイーブイが飛び乗ってきた時に答えは決まったんだと思います。
ふたりと一匹で暮らす毎日は幸せでした。ポフィンを焦がしたり、ふたり揃って風邪をひいた時にイーブイが勝手に外に出てお隣さんを読んできてくれたり。そして何よりも、みんなでテレビで映画を観ていた時に、不意にイーブイが進化したんです。その時はちょうど晩ご飯の前で夕暮れ時、進化したのはエーフィでした。
傷ついたイーブイを率先して手当したのも、飼うと決めたのも、名付けたのも彼女でした。勿論私も、大切にしていましたが、やはりエーフィもどこか彼女に懐いていた気がします。そのエーフィすら、彼女は置いて出ていきました。
私は、エーフィと……彼女と、どう向き合えばいいんでしょう。
女性同士の恋愛の経験はない、だから勝手なことを言わせてもらう。
エーフィは相手にとても懐いていたんだろ。で、今はあなたのとこにいる。エーフィは多分、やり直せるってわかってんじゃないかな?
エーフィって、まじ賢いから。