2023/06/28 15:13

ついのすみか

とても嫌なことがあったので町外れの海崖に来ました。

泣いて泣いて干からびてしまいそうだったので、海と共にあればプルリルみたいになれるかと、そう思ったのです。
暫く海面を見つめていると、海から吹き上がる突風に煽られました。
ドサリと、尻餅をついたと思ったのですが。
お尻の下にはワタッコがいました。

私が慌てて退けると、ワタッコが崖の後方にある森を示しました。
着いてこいと聞こえたので着いていくと、そこには沢山のワタッコがいて。
安楽椅子で眠るお婆さんを囲んでいました。

私は、切り株に座っておばあさんが目覚めるのを待ちました。
暇だったのでワタッコ達を観察していたのですが、随分と綿の寂しいワタッコが多い様でした。皆一様に、素肌が見えるほどに綿を減らしているのです。中には半分にも満たないであろう綿しか付けていない子もいました。

日が真ん中を越えた頃に、やっとおばあさんは目覚めました。

おばあさんは言いました。
「ここには、季節風の影響で旅の終わりの近いワタッコが沢山飛んでくるのだ」と。
「最初は1匹2匹だったのが、今では随分と増えてしまった。一人で終わるのは誰だって寂しい。それは私も同じだから、ここで静かに寄り添っているのだよ」と。

私も一人になってしまったと言えば、気が済むまで居ればいいと静かに微笑んでくれました。

ここはとても綺麗な場所です。
たまに強い海風が吹くと、綿毛が舞って光を反射します。
とても悲しい命の輝きが、あまりにも美しいのです。

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