『泡沫のアシレーヌ』
こちらは以前にも紹介しました、童話をモチーフにした小説です。短い夏、うたかたのボーイミーツガールを描く恋愛もの。メタモン文庫。
両親を亡くし、一人で港町に住まう主人公の少年はある日、浜辺で不思議な少女に出逢います。
名前もわからない、言葉も喋れない。けれどさざ波のように美しく魅力的な歌声を持つ、わかることはそれだけです。
少女は何故か主人公と行動をともにしたがるため、一人暮らしの自宅に住まわせることになります。
少年と少女、まるでふたりぼっちの世界は潮の満ち欠けのように満たされ、そして遠ざかる。
正直なところ顛末は予想出来るため、チープと評価されがちな作品ですが、私はストーリーのどんでん返しではなく、そこに至るまでの導線がこの作品の魅力だと思います。
泡の浮き出し加工がされている表紙も非常に綺麗で、電子や図書館ではなく、ぜひ本棚に置いておきたい一冊です。