この子たちに会ったのは8年前、私が13歳の時。当時ジョウトで暮らしてた。
私は幼い頃からブリーダーを目指してて、その時も見聞を広めるためにホウエンへ訪れてた。半年ほど預かり屋で働かせてもらって、経験を積もうっていう了見で。
エルレイドとサーナイトとはその預かり屋で会った。会った当初は2匹ともラルトスだった。
2匹ずっと一緒にいて、物陰やポケモンの陰に隠れてることがほとんどだったから、ああ人見知りなんだな、かわいいなって思いながら、でも怖がらせるわけにはいかないからそっとしてた。
でもね、預かり屋夫婦が言うには、あの子たちは人見知りなんじゃなくて、人間に心を閉ざしてるんだ、って。
聞けば元々はここで生まれたわけじゃなく、お客さんのトレーナーの自宅でサーナイトがタマゴを2つ生んだと。でもそのトレーナーは面倒を見切れないから、ひもじい思いやつらい思いをさせるくらいならとこの預かり屋に委託したそう。
でもそれをタマゴの中から聞いてたラルトスたちは「捨てられた」と誤解して、孵るまでも通常より時間がかかったし、孵ってからも人のことは信頼せず、一部のポケモンとしか関わらない。どうにか人にも心を開いてほしいと試行錯誤したんだけど、思うような結果が得られず今に至ってしまった、って。
私はそれを聞いても、きっと大丈夫だっていう予感があった。
預かり屋夫婦の努力も伝わってるはずだし、委託したトレーナーの気持ちの真意にも気付いてるはず。なにより感情に敏感なラルトスが完全に隠れたり危害を加えてこないっていうことは、きっとどこかで信頼したい気持ちがあるんだろうなって思えたから。
変化があったのは私が預かり屋に滞在して1ヶ月経った頃。
預かったポケモンたちの世話をしている時、ふと気配を感じて後ろ見たら、いるの。ラルトスの片方が。いつもは遠くの物陰からこちらを覗くだけだったのに。
じっと私を見つめてきて、きっと何か要求があるんだろうなって屈んだら、その子が私の手に触れてニコって微笑むの。気がついたらラルトスのもう1匹のほうも近くにいて、先に来たラルトスの手をぎゅうと握りながら私の膝をぺちぺち叩く。
いつ、何がきっかけで信頼してくれるようになったのか、私にも分からない。でもたったこれだけが嬉しくて泣いてしまった(ちなみに要求内容は「きのみくれ」だった)
そのあとは預かり屋夫妻や他のポケモンたちにもすぐ心を開くようになった。相変わらず控えめな子たちだったけど充分大きな変化だったから、前よりいい雰囲気になってた。
そのうち私の契約が満了になって、じゃあお別れだねっていう時。
ラルトスたちとのお別れが寂しいなと思ってたら、2匹が飛び出してきて私の足元に引っ付いてきた。私が元々持ってたモンスターボールを示してきた時、私についてくるって言ってくれてるのだと分かって、最後の最後に号泣したよ。たった半年でこんなに信頼を寄せてくれるなんて思ってなかった。
それでジョウトに連れて帰ることになって、ジョウトで過ごすうち2匹はエルレイドとサーナイトに進化した。
それから8年経った今、私の生まれ故郷のイッシュで一緒に暮らしてる。
3番道路にある預かり屋で働いてるのだけど、2匹とも仕事を手伝ってくれてる。あの子たち、本当に面倒見がいいの。大人しいのは相変わらずだけど、周りをよく見ていて気を配ってくれてるし、あれこれ手伝いもしてくれてる。
強情なところも残ってるから、たまにやらかしもするけど、ご愛嬌っていうことで上手くやっていけてる。
2匹より先に手持ちになっていたウインディたちや、あとから仲間になったゾロアークたちともいい関係を築けてる。大変なこともあるけど、毎日本当に楽しい。
長くなってしまったけど、ここまで読んでくれて本当にありがとうございました。ポケモンたちが本当にかわいくて仕方ないって話でした。
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