母子家庭鍵っ子だった私はいつも夜の19時(遅い時には20時半)まで家に一人だった。ポケモンもおらず、本当に一人きり。
それがずっと続いていたせいか、近所のおねえさんが不憫に思ったのか、19時ぐらいまで家にいて私の面倒を見てくれるようになった。母に頼まれてきたと言っていた。
もう私はすごく嬉しかったんだ。母に迷惑かけまいと、寂しいとも言わなかったから、おねえさんにうんと甘えたの。
おねえさんと夕飯を作って母を待った。遊んだり、勉強を教えてもらったり。
母が再婚することになって、母が家にいる日が増えたり、早めに帰ってきたりするようになって、おねえさんはあまり来なくなった。
ある日、引っ越すことになった。新しい父の家に越すから。
最後の日、おねえさんが「ミヤちゃんのこと忘れないよ。ずっと私はミヤちゃんの味方だからね」、「大好きよ」、て指切りの約束をしてくれた。
泣きそうだったけど、「ずっとここにいるから、寂しくなったらまたおいで」、て言ってくれたから、笑顔でお別れできたの。
そんなことをふと思い出して母に話した。
おねえさんは元気かな、て。生まれ育った家は今住んでいる場所から遠く離れていて、なかなか足を運べない場所だった。母も知るはずもないけど、元気だよ、て言ってもらいたくて。
そうしたら、母の顔色が悪くなった。震え出して、私の目を見て聞いてきたの。
「何の話をしているの?」
母の話では、そんなおねえさんは住んでいなかったし、誰にも私の面倒を見て欲しいと頼んでも、面倒を見るとも聞いていないんだって。
でも、私は確かにおねえさんに面倒を見てもらった。母の帰りを待つ間料理を作ったりもした。覚えてる。
母は、突然料理ができるようになったから驚いたけど、家庭科の授業で習ったとばかり思っていた、て。
幽霊かと思ったけど、たしかにおねえさんは存在していて、あたたかかったし、優しかった。私のことを抱きしめてもくれた。だから幽霊何かじゃない。
それで地元のことを調べたりしたんだ。それが1ヶ月前のこと。今日、全てがわかった。
地元では昔、こどもを亡くしたガラガラがいたそうだ。
ガラガラは自分のこどもが死んでしまったことが受け入れられなくて、時折人間のこどもを自分のこどもとして世話をすることがあった。
家にあがり、こどもにきのみを与えたり、あやしたり。
でも住民たちは攫うつもりだと怒り、ガラガラを追い出し、時には手をあげ、ついには死んでしまったんだって。
哀れに思った一部の人が埋葬して、現在では立派なお墓があった。
そのお墓は、私が住んでいた家から100メートル先にあったの。
ありえないかもしれない。でも、私はあのおねえさんはガラガラだったんじゃないか、て思えて仕方がない。
そう思うと、涙が溢れてどうしようもない。
それだけ。長々とごめんなさい。誰かに聞いてもらいたかったの。
業が深すぎる…
母親が震えているのに引っ掛かるが、ガラガラの冥福を祈ります。