ガキの頃の話聞いてくれ。
夜中にイワンコがやたらに吠えるから、何かと思って庭に出た時だった。突然凄い音がして目の前が真っ暗になったんだ。そっから目が覚めたのが二ヶ月後。ドクターの話では降ってきた隕石が頭に直撃したらしく、生きてたのが奇跡だって。
隕石はそのまま庭に埋まってて、最初は見るたび怖かったんだが、いつか俺も家族も思い出さなくなっていた。
でもその後暫くして不思議なことがおこった。
俺はサイコパワーに目覚めたんだ。
風を起こしたりスプーンを曲げたり……人ひとりくらいなら浮かせて移動させることも出来るようになった。まだガキだった俺は「俺は普通の人間とは違う」って万能感に溺れ、でもなんか地元の不良をボコすとかそういうのは怖いからムカつく親に内心イキったり、友達にだけコッソリ見せて自慢したりしていた。今思えばびびりの雑魚で良かった。
でも夏の終わり頃のある時だ。外から帰ったらまたイワンコが吠えていた。なんか嫌な予感がして見に行ったら、埋まってた隕石がぼんやり光りながら浮いてるんだ。慌てたよ。咄嗟にパワー全開で押さえつけようとした。でも、やっぱり無理だった。ヒビの入ったところから隕石が割れて、ポケモンが出てきた。メテノだ。その時直感した、いや薄々は気付いてたんだ…理屈はわかんないけど、俺のサイコパワーはそいつのお陰だったんだって。
メテノが昇るにつれて俺のパワーがどんどん無くなっていくのが分かって、でもどうしようもなくて、姿が見えなくなる頃にはもう俺はすっかりただの人間に戻っていた。
元々サイコパワーなんてもて余してたし、俺の日常は今にして見れば結局メテノがぶつかる前と後でなんにも変わってなかったんだけど、この体験だけは人生に一度あるかないかの思い出だと思う。
ホクラニ天文台の特集がテレビでやってたからさ、なんか懐かしくなって話したくなったんだ。見てくれてありがと。